秘密の恋はアトリエで(前編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
「少し見ててもいい?」
「ああ、かまわないよ。そうだ、ちょっと来て」そう言って、手招きした。
「なかなかこの表情が決まらないんだ」女性の顔を指して靭也が言った。

 いつになく悩んでいる様子に見える。
 そんなこと滅多にないのに。

「夏瑛、ちょっと手伝ってくれる?」
「いいけど。でも、何を手伝うの?」
「こっちに来て」

 靭也にいざなわれて隣の準備室に入ったとたん、すっと手を掴まれて抱きすくめられた。

「夏瑛の表情を参考にさせて」
「さ、沢渡……靭にいちゃん、だめだよ。誰かに見られたら……」
「こんなところまで誰も来ないよ」

 靭也は夏瑛をすっぽりと包みこむ。
 絵のなかの男性のように。
「でも、大きな声を出したら、誰かに聞こえるかもな」

 靭也の唇が夏瑛の唇をふさぎ、抗う声を飲みこんでしまう。
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