秘密の恋はアトリエで(前編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
「それに、夏瑛はちゃんとアプローチしたじゃん。靭先生に」

「えっ?」

「靭先生と付きあうきっかけを作ったのは、夏瑛でしょ」
 優しく微笑みながら美岬は言った。

 その言葉を聞いて、夏瑛は高2の、あの暑かった夜を思いだした。
 そうだ、あのときは、後先のことなんて何も考えていなかった。
 ただ、靭也のそばを離れたくなかった。どうしても離れたくなかったから……
 
「あーあ、夏瑛がうらやましい。あたしはまだそんな恋愛、経験したことないよー」
  
 美岬は黒々とした瞳を真直ぐに夏瑛に向けて、言った。
  
 美岬みたいに考えられたら、どんなにいいか。
 でも、やっぱり無理そうだ。

 自分からアプローチするなんて、とてもできそうにない。

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