秘密の恋はアトリエで(前編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて

4)

「友だちに見られちゃったよ。別館の入り口にふたりでいるところ」
 
「そっか。やっぱ、あそこはまずいのかな」
 
 絵の具が切れたから、と靭也が夏瑛のバイト先の画材店にやってきたのは閉店間際。
 そのまま夏瑛があがるのを待ち、車で送ってくれることになった。

 駐車場まで並んで歩く。
 さっきまで雨が降っていたが、今はもう雲の隙間から月がのぞいている。
 とはいえ灰色の雲がすごいスピードで動いているので、またすぐ隠れてしまうだろう。

「別にこそこそする必要ないんだけどな。悪いことしているわけじゃないのに」

「それはそうだけど……」

 助手とはいえ、教える側の人間と学生が付きあっているというだけで、

 口さがない人たちから何を言われるかわからない。
 おそらく叔父にも迷惑がかかる。
 そんな波風は立てたくなかった。
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