秘密の恋はアトリエで(前編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
「ああ、そうだ。日曜のことだけど……」と靭也が言いにくそうに口を開いた。

 再来週の土曜、叔父の誕生日パーティーがあるので、この日曜にプレゼントを買いにいく約束をしていたのだ。

 その日は夏瑛のバイトも休みだったので、久しぶりに靭也の家で昼ごはんを作ろうかと話していた。

 最近、夏瑛は学校とバイト、靱也は学校と個展の準備に忙しく、会えても一緒にいられるのはせいぜい1~2時間。

 長時間ふたりで過ごすことがなかったから、夏瑛はものすごく楽しみにしていた。

「ごめん、どうしても外せない用事ができて……。会うの、夕方からでもいいか?」

 絵の具は口実で、きっとこの話をしに来たんだ……

 がっかりして思わず顔に出そうになった。
 でも、そんなことで不機嫌になるのは、あまりにも子どもっぽい。

「うん。わかった。じゃあ、どこで待ち合わせする?」

「サンキュ。じゃあ、新宿の、いつもの本屋で。6時には行けると思うから」

 でも……外せない用事ってなんだろう。
 ふだんなら理由を説明してくれるのに。
 釈然としないまま、結局何も聞けずにその日は別れた。
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