秘密の恋はアトリエで(前編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
だが靭也は夏瑛を離そうとしない。それどころか手に少しだけ力がこもる。
「靭にいちゃん?」
靱也のまっすぐな眼差しが夏瑛を刺す。
「夏瑛……本当におれでいいの?」
「えっ?」
「おれたち、だいぶ年離れているし……夏瑛から見たら、充分おじさんだろ。それに、おれは本当に絵を描くためだけに生きているような人間だから、休みの日と言えば、美術館に行くぐらいで、面白いところにも連れて行ってやれないし、それに――」
まだ何か言おうとしていた靭也をさえぎって夏瑛は言った。
「靭にいちゃん、初めて会った日のこと、覚えてる?」
「ああ。夏瑛はたしか、小学生だったよな」
「うん、小6。ルドンの画集を一緒に見ようって言ってくれたときから、ああ、わたし、この人に会うために生まれてきたんだって思ったの。何も知らない子どもだったけど、そのことだけはわかった。あの時からわたしには靭にいちゃんしかいなかっ――」
「靭にいちゃん?」
靱也のまっすぐな眼差しが夏瑛を刺す。
「夏瑛……本当におれでいいの?」
「えっ?」
「おれたち、だいぶ年離れているし……夏瑛から見たら、充分おじさんだろ。それに、おれは本当に絵を描くためだけに生きているような人間だから、休みの日と言えば、美術館に行くぐらいで、面白いところにも連れて行ってやれないし、それに――」
まだ何か言おうとしていた靭也をさえぎって夏瑛は言った。
「靭にいちゃん、初めて会った日のこと、覚えてる?」
「ああ。夏瑛はたしか、小学生だったよな」
「うん、小6。ルドンの画集を一緒に見ようって言ってくれたときから、ああ、わたし、この人に会うために生まれてきたんだって思ったの。何も知らない子どもだったけど、そのことだけはわかった。あの時からわたしには靭にいちゃんしかいなかっ――」