戦争に塗れたこの世界はボードゲームで勝敗をつけてしまうようで。
着いたのだろうか。

ガタリ、と音を立てて馬車は止まった。

馬車、といってもリヤカーみたいなものだが。

ストン、と馬車から降りる。

目の前にはただの森しかない。

此処が『神代の郷』?

何もないじゃないか。


「此処じゃないよ。もっと先だ。」


そして男は歩き出す。

私はそれにつられるようにしてついて行った。































…。

…どのくらい歩いただろうか?

そして、あとどのくらい残っている?

疲れた…。


「あの、あと、どれくらい、何ですか…?」


途切れ途切れで話す。

しかし男はガン無視。

少しイラついたので側にあった石を投げる。


…!!

一応私は頭を狙ったつもりだったが。

振り向きもせずに避けたぞ此奴。

伊達に理事長名乗ってないか。


すると突然止まる。


「ブフ!!と、止まるなら、止まるって…?」


男が先程とは違う面持ちで俺に振り返る。

そして私に問ふ。


「君は精神は強い方かな?」


「え?ま、まぁ何も感じないから多分大丈夫…。」


よく分からない。

何でこんな事を聞くんだこのバカは。


「そうかい。ああ、そうだ。
 聞くのを忘れていたが君の名は?」


「平。苗字は分かるが下の名は知らん。」


「…ん?」


何故固まる?

これは世の中の普通だと教わった。

確か私の家は位が低いから
苗字のみで名前はない、筈なのだが。


「そうか…。じゃあ私が決めてあげよう。」
































「君は今から平 恋風(タイラノコイカゼ)だ。」






























「…理由は?」


「恋のように色鮮やかで、
 風のように速く駆ける、と言う意味だ。」




「…そう、か。」



私は頷きながら顔を上げる。



「ありがとう。素敵な名だ。」
 



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