陰の王子様
ジョセフさんが私の顔を覗き込み、ぽんぽんと頭を軽く叩いた。
「それお嬢ちゃんにあげるよ。きっとばあさんもそう言ってる。」
どこか遠くを見て優しく笑うおじいさん
「…ありがとうございます。大事にします。」
「何かあったら、助けを呼ぶか、逃げるかしなさい。きっとばあさんが助けてくれる。」
「はいっ。」
優しい。
初めてなのに、何でこんなに優しくしてくれるのか…。
私は思わず涙が出てきてしまった。
こんな夫婦になってみたい。
お互いが信頼し合って、思い合って。
いつか、遠い未来、私の隣には誰かいてくれるのだろうか…。
私の力なんて関係なく、ただ私を必要としてくれる人
「そんな人……もう、いないよね。」
無条件に愛してくれた両親以外には。
そう思うと、急に目の前のおじいさんが眩しく見えて、パッと俯き、涙を堪えた。