陰の王子様
会話なんてできるわけない。
でも、聞かずにはいられなかった。
なんとしてでも王を守ってくれる側の誰かに伝えなければならないのだ。
じっと鷹を見ていると、鷹が静かに肩へと再び止まった。
これは…、
「おじいさん!書くものを貸してください!」
慌てて店へと向かうおじいさんを横目に、袖を一部分裂いた。
「えっ!?何してんだレティシア!」
そんなタセンの声に耳を傾けず、割と簡単に裂ける袖を手のひらほどに裂いた。
「ほらっ、これでいいかい?」
「ありがとうございます!」
私は地面に座り込み、顔も名前も知らない人に届けと思いを込める。
「…届けてくれる?あなたの主に…。」
足にくくりつけられた布を何とも思ってないかのような鷹
バサバサと空に向かって飛び立つと、
ピィー
と返事を返してくれた。