陰の王子様
じっとクロードを見たまま、エレンに見向きもせず話すルシア王
ルシアを見下ろすエレンは鋭い目つきを変え、爪の長い手をゆっくりとルシアの肩に置き、笑みを携えて言った。
「それ、1つじゃないのは知っているかしら?」
「父上っ!!」
プシュッと何かを王の顔にかけたエレン
一歩届かなかったイオは、エレンを王から引き離す。
「ルシア様っ!」
「あなた!!あなた!」
「サンチェ!!直ちに終わらせこの者たちを拘束しろ!」
主の声が聞こえると、楽しそうに遊んでいたサンチェは一瞬でクロードの剣を弾き飛ばし、拘束した。
「イオ様、医師を呼んで参ります!」
サンチェの側にいたスズミが走って部屋を出て行く。
何も伝えていないが、遠目からでも異常事態だと判断したのだろう。
「くそっ。厄介なことばかり…。」
倒れ込んだエレンを見て、捕まえてた腕を離す。
おそらくエレン自身にも王にかけたものがかかったのだろう。
ぐったりと椅子にもたれかかる王
最悪なことにならないことを願うしかない。