陰の王子様
「……そうなんですね。」
何で?が頭の中で駆け巡っている。
…もしかして、利用されるため?
逃げてきたつもりが、実は違ったの…?
「大丈夫。」
よほど顔が強張っていたのか、ジョセフさんは私の顔を見て、安心させるように笑った。
「その人からレティシアのことは聞いてる。でも、レティシアを利用して何かしようとか、そんなことは一切ないから。そこだけは、信じてくれると嬉しい。」
「はい…。」
あれから1週間ほど経って、ようやくいつもの日常に戻れた。
熱が出たりと、なかなか完全に治らなかったけど、昨日やっとここの医師である、ナバおじさんの許可が降りた。
…ジョセフさんが言っていたことに関しては、信じてるけど、どこか信じきれない自分もいる。