陰の王子様
ガラガラと音を立てて走る馬車の中から外を覗く。
……懐かしい、城だ。
もうここには来ることはないと思っていたのに、今度は騎士服ではなくて、上質なドレスを着て城にいる。
「レティシアちゃん、大丈夫よ?何かあったらすぐ私たちに言ってね?」
「はい…。………緊張します。」
そわそわと落ち着かない私の手をアメリアさんは優しく握ってくれ、ジョセフさんは優しい笑みを浮かべていた。
…パーティーも緊張するけど、1番はこの格好だ。
こんな豪華な格好したことないし、ヒールを履くのも初めて。
パーティーどうこうの心配より、ドレスを踏んで転けないか、足を捻って転けないか、それが1番の不安
……それに、髪の毛も。
最近肩下まで伸びてきていた私の髪は昨日肩上に切ってもらった。
黒く染めていた頃の色素が抜け始めたのか、根本が本来の髪の色になっており、少し目立っていた。