陰の王子様




ゆっくりゆっくり立たせて上げ、今度は腰と膝裏に手を回して、持ち上げる。


「きゃあ!」


「ごめんなさい。我慢しててください。絶対助けるので!」




火が近くにある中、1番安全そうな窓を見つける。



「降りる時、痛いかもしれないけど、頑張ってください!」




誰かが割って逃げたであろう窓から使用人さんをゆっくり外に送り出す。



その間にもすぐそこに火が迫っており、無事に着地した使用人さんは、こちらを見て声を上げる。



「私の手をとってください!急がないと火が!」


「もうここはダメです!私は大丈夫なので早く逃げて!」




ガシャンッと廊下のシャンデリアが落ち、私たちは一斉に窓から離れた。








近くの部屋に避難し、呼吸を整える。



煙を大量に吸っているため、苦しい。


…でも、あの男に絞め殺されるよりは全然良い。



あの使用人さんを助けられたからか、やり切った感がすごくあって、私はそのまま床に横たわる。




…良かった。
予知夢通り、私は火の中に取り残されたけど、1人の命を救えた。




後悔せずにすんだ。






そう思ったけど、うっすらと頭にはあの穏やかな時間が思い出された。







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