陰の王子様
「イオ様!私が行きます!貴方はここにっ!」
その声を無視して、頭から水をかぶる。
「イオ様っ!!」
「行かせてくれ。頼む。」
何も言わなかったローガンを背に、走って屋敷の南側を目指す。
そこはすでに煙が充満しており、さっきの使用人が逃げたのか、割れた窓からは黒い煙が上がっていた。
近くに姿はない。
迷いなく屋敷内に入り、熱い火の中探し回る。
ある程度廊下を進んだが、廊下に人影はない。
…遠くまでは行っていないはずだ。
近くの部屋を開けていく。
そして、割られた窓の近くの部屋
そこに横たわっていた。
駆け寄り、彼女を抱き抱える。
煤が肌についており、胸が苦しくなる。
顔に耳を近づければ微かに息はしていた。
「絶対助けるからな。」
彼女の肩に濡らした俺の上着をかける。
ぐったりとした彼女を横抱きに抱え、部屋の中の窓を見る。