陰の王子様
部屋の中はそこまで火が回っていないが、外は轟々と燃えている。
廊下はもう厳しいだろう。
窓を蹴り破り、大きく割っていく。
なるべく彼女に負担がかからないように。
まるで火の輪をくぐるような感じだ。
腕の中の彼女に目をやれば、首元のネックレスが目に入る。
『俺が守ってやる。だから、もう泣くなよ。』
小さな頃、泣き疲れて眠ってしまった彼女に誓った言葉
もう一度強く抱き抱え、外に飛び出した。
火事は屋敷をほぼ全焼にしてしまった。
原因は調理場らしい。
突然爆発してしまったらしく、調理場の者たちは責任をとろうとしていたが、キース公爵がお咎めなしとした。