陰の王子様
「それと、ライラ様にお話を聞いたら、男とレティシアが揉めていたと。」
「…本当かねぇ。僕には男の一方的な暴力にしか見えないけど。」
俺の部屋で眠っているレティシア
ベッドの側を離れない俺にローガンやサンチェたちが逐一報告に来てくれる。
「その手首と首の跡は見てられないよ。」
サンチェの言葉に全員が静まる。
本当に、見ていられない。
綺麗な肌に残っている忌々しい手の跡
…こんなに跡が残るほど…、手首は特にひどい。
「男はこっちで処理する。報告しない方が良いだろ?」
「ああ、それで頼む。どいつか知ったら、命の保証はできない。」
ずっと握っている小さくて、少し冷たい手を両手で包み込む。
戻ってこいと思いを込めながら。