陰の王子様
『お兄ちゃんは、怖い未来がきたらどうする?』
唐突で変な質問に眉を寄せる男の子
私もそれ以上は言えず、鷹をじっと眺めていた。
『怖くても、逃げることはしない。それが俺のやるべきことなら。』
その言葉がじんっと胸に響いた。
"逃げない"
また夢を思い出して涙が込み上げてくる。
グスッと鼻をすする私に男の子が、また泣き出したと言いたそうに見てきた。
『…ち、血が流れるような怖いことでも?』
『……そんなことがあったのか?』
『ない。…でも、未来は、どうなるか……。』
拭っても拭っても溢れる涙
忙しなく両手で拭っていると、ハンカチが押し当てられた。
『大丈夫だ。そんな未来、きっと来させない。』
『ふふ…、お兄ちゃん、偉い人みたい。』
そう言うとグイッとハンカチで目を覆われ、何も見えなくなった。