陰の王子様
「スズ…、ごめんね。私、城抜け出しちゃって……。」
ずっと気がかりではあった。
黙って出て来たから。
でも、スズは城にいたら仕事もあるし、良い生活は送れる。
そっちの方が絶対スズにとって良い。
そう考えていたんだ。
「お嬢様、私も後を追おうとしたんです。…でも、決めたんです。ここでお嬢様を待とうと。お嬢様がもう一度城に戻って来たら、私がお世話係として側にいられるように。」
「…それに、お嬢様には強い味方がいるみたいです。」
私から離れて嬉しそうに笑うスズ
その表情には色んな感情が詰まっている気がした。
「味方、って…、コヴィー侯爵?」
「コヴィー侯爵様はもちろんですけど、もっと昔からお嬢様を見守っていた方がいたんですよ!」
ベッドの側に座り、笑って私の手を握りしめる。
…昔から、見守っていた?
心当たりは全くない。
里の人たちは、毎日遊んで泥だらけの私を笑って見送ってくれたけど。
里を離れてからは会ったことはない。