陰の王子様
トントンと優しく頭を撫でている王子
私は今にも溢れ落ちそうな涙を堪えるのに必死だった。
しばらく抱きしめられて、離れたと思ったら、ベッドに座りなおされた。
すると、王子は考えられない行動をする。
「クロードが10年前起こした事件について、謝ってすむ問題ではないが、謝らせてくれ。」
「すまなかった。レティシアの大切な家族、居場所、…全てを奪ってしまった。……本当に申し訳ない。」
さっきまでの私のように跪いて頭を深く下げている。
「王子!!おやめください!」
慌てて王子の体を起こそうとするが、びくともしない。
「王子!王子がこのようなことをする必要は…!それに、私自身、もう後悔はないのです!」
そう言い切ると、王子の体の力が抜け、びくともしなかった体が簡単に起きる。
床に座ったまま、私を困ったように見るので、私も王子の側に座り込んでしまう。
「…体はどこも痛くないか?」
「はい、大丈夫です。」
「本当か?クロードと戦った傷も、エレンから盛られた毒も、火事に巻き込まれた後遺症も…。」