陰の王子様
「ここでキース家の使用人を逃したんだろう?」
思い出すのは、未来を見た責任から生まれた使命
誰も死なせてはいけないと強く思っていた。
「どうして、それを…。」
「部屋の中で倒れてるレティシアを見て、生きた心地がしなかった。」
そう言うと王子は私の体をギュッと抱きしめた。
「この火事も起こることだと分かっていたのか?」
「はい……。」
分かっていながら、ここまでの被害が…。
王子の腕の中で屋敷を見上げる私
それに気づいたのか、抱きしめていた腕を緩めて、私をまっすぐ見る王子
「レティシアのおかげで誰も死なずに済んだんだ。それに、王の件も。レティシアが知らせてくれなかったら、今どうなっていたか分からない。」
「私は、…自分では、何もできなくて。…顔も知らない鷹の飼い主さんに頼ってしまいました。」
「それで良かったんだ。何もしてないなんてことはない。」