陰の王子様
何か、懐かしい記憶と重なった。
どういう記憶かと言われると、何も分からない。
でも、あの言葉だけが今、頭に浮かんできた。
"逃げない"
この言葉は、いつからか私の真ん中にいた。
誰の言葉だったのだろう。
黙り込んだ私を不思議に思っている王子
私は、じっと地面を見つめて、何か思い出そうと必死になっている。
しばらくあのまま2人で座っていたら、王子が『そろそろ帰るか。』と言ったので、パーティー会場の近くまで戻ってきた。
すると、どこからかジェハさんが現れて、王子が帰ると伝えていた。
「私もここで。今日は、ありがとうございました。」
「待て、送る。」
「えっ、いや、大丈夫です。」
「危ないだろ。」
王子から発せられた、その一言に胸がまた高鳴る。