陰の王子様
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王子は数日おきにコヴィー家にやって来た。
王子が特定の家を頻繁に出入りしているところを知られると色んな噂が絶対にたつので、目立たない服装で裏口からいつもやって来ていた。
何でもないことをいつも話していた。
王子が家にやって来ると言うから、最初の日は眠れないくらい緊張していたけど、その日王子は私を連れて庭を歩いただけだった。
王子はジョセフさんと昔から親交が深いようで、屋敷には私より全然詳しかった。
だから、緊張してた私もまだ知り得ない屋敷の、気になったことを色々質問していた。
そして、3回目の訪問で王子に言われたのが、名前で呼んでくれということ。
キース家のパーティーで一度呼んだが、それからも王子呼びだった私に、王子呼びは禁止だと言われた。
『……イ、オ様』
『レティシア』
綺麗な笑みを浮かべて私の名前を優しく呼んでくれる。
前から思っていたのだが、いつの間にか名前で呼ばれていた。
きっと、サンチェさんたちが気兼ねなく言ってくれるから、王子…、…イオ様、も流れで名前を覚えてくれたのだと思う。