陰の王子様






「ですが、あの年、あの場所でお話しなさっていたことは、記憶にないですか?」



何も分からず首を傾げる。


「私とイオ様は湖の側で泣いているレティシア様と会いました。」


「湖…。」



思い浮かぶのは、山の中にあった湖
…そういえば、夢を見た時は湖で1人、泣いてた気がする。



「見覚えがあったので、トレス家の御令嬢かと思っていましたが、レティシア様はやはりイオ様のことは分からず。」


「すみませんっ。」




肩をすくめてお2人に謝る。


「いえいえ、お気になさらず。…それからお2人でお話になって、レティシア様が寝てしまった時、イオ様は自分の分身として。……元からレティシア様に差し上げるつもりで作られたネックレスを優しいお顔でつけていました。」




うふふと嬉しそうに笑うジェハを見ていると、何だか、うっすらと湖の光景が浮かんだ。


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