陰の王子様
そんな幸せな胸の中、ひとつの光景を思い出す。
「イオ様…。」
「ん?」
「あの、…1度、幸せそうな家族の夢を、見たことがあって。家族4人で手を繋いでいました。」
「……あと、その、また別の夢で、……これは私だと思うんですが。……小さな子どもが、2人、『お母様』と私に言った夢を見たんです。」
「だからっ……、その、あの幸せそうな4人家族は、私と、…イ、イオ様、だったら。…嬉しいなって………。」
こんなこと言うのはとても恥ずかしい。図々しいと思われないだろうか…。
言い切った後、目の前の胸に顔を押し付ける。
「本当、可愛いなレティシア」
埋めていた胸が離れ、代わりにイオ様の綺麗な顔が緩んで私を見ていた。
そして、ゆっくり近づくイオ様を眺めながら、そっと目を閉じていた。