陰の王子様
それでも奇妙な視線で見られてしまうのは避けられないため、なるべく外に出ないようにしている。
式の時には黒髪の部分は無くせるかな、やっぱり無理かな、というのが最近の1番の考え事だ。
「今日は街に出るんだろう?」
「うん。会いたい人がいるの。」
スズによって丁寧に編み込まれた髪に帽子を乗せ黒の落ち着いたドレスを着た私は久しぶりの街にワクワクしていた。
微かな記憶を頼りに来たドアの前
「合ってるんだろうな?」
「たぶん。…ここだった気がする。」
恐る恐るコンコンとノックする。
「はーぁい?」
ドアを開けた先にいた私と目が合い、一瞬沈黙した後、パァッと空気が変わった。
「レティシアちゃん!?」