陰の王子様
「ん……、」
寒気を感じてズルズルと左に動けば、温かくて、そこに隙間なくうずくまる。
微睡む中、妙な手触りを感じる。
それでも眠気には勝てず、包まれる感覚を感じながら、完全に意識を手放す。
「おはようございます。」
「悪い、もう少ししたら起きる。」
「いえ、ごゆっくりしてください。急ぎのものはありませんので。スズミとリン、アキにも今日は私が対応すると言ってあります。」
「そうか、助かる。」
「ご用の時は呼んでください。」
ベッドを囲む幾重もの薄い布
ジェハが出て行くのがシルエットで分かる。
ふうっと息を吐きながら、胸元に引っ付いているレティシアの頭を撫でる。
お互いの肌が隙間なく密着している今の状態に胸が熱くなる。
長かった一方的な想いがやっと伝わって、レティシアも応えてくれた。
そして今、無防備な姿で自分の手の中にいる。