陰の王子様
あまり思い出したくない記憶なんだが。
忘れる訳にもいかない。
「…何もなかったから。」
そう。
あの時は真実の欠片が拾えた日
それ以外のことを考える余裕はないんだ。
「シンア、それでも男ー?男ならグイグイ行かねーと!」
アキの手が頭に乗せられ、ぐしゃぐしゃにされる。
でも、自分の微妙な空気を感じ取ってくれたのか、この状態でみんなが去っていくまで適当な話を一人でしていた。
しばらくして、やっとみんなが散り散りになった。
「シンアの髪サラサラだ。」
そう言ってぐちゃぐちゃになった髪を手ぐしで整えてくれる。
「…助かった。アキありがとな。」
「何もしてないよー?俺だって、何でシンアがオレリアの誘いにのったのか知りたいけど。…何か理由があるんだろ?」
小さくうなづく。
「俺に出来ることがあるなら言ってくれ。」
こんなことを言ってくれる友がいる。
それが何よりも嬉しかった。