陰の王子様
でも、今すぐ動くのは得策ではない気がする。
騎士団の宿舎の天井をボーッと眺める。
10年という長い期間をここで過ごしたからか、少し寂しく感じた。
敵の本拠地かもしれないと疑いつつも、濃密な時間を過ごせた。
それに、騎士団は良い人たちばかりで、本来の目的なんて忘れていた時もあった。
また溢れ落ちそうになる涙を今度はしっかり堪えつつ、気合を入れ直す。
「ここからが大一番。下手したら…、最悪、殺される…。」
…が、それでもいいのかもしれない。
天国の両親に会えるのだから…。