陰の王子様
王子の話す言葉が右から左へと流れていく。
ただ不快感だけが自分に残った。
「……お断りします。」
しんっと静寂が訪れ、真顔の王子が近づいてくる。
反射的に自分も後ろに下がるが、すぐ側に花の壁があり挟まれてしまった。
今にも自分を殺してしまいそうな王子が目の前まで迫り、グシャッと自分の顔の側にある花を握り潰した。
ひらひらと白い小さな花びらが散っていく中、王子はうっすら笑みを浮かべ、言った。
「君は俺のものなんだよ。レティシア」
グッと口に布を当てられ、次第に目が閉じていく。
目が覚めた時、自分は薄暗い部屋にいた。
手足は縛られている。
微かに漏れる陽の光
ただはっきりわかるのは自分が横たわる周りが薄い布で幾重にも囲まれているベッドのみ。
手は頭の上に、足は片方ずつベッドに固定されていた。