陰の王子様



ここは恐らく王子の懐なんだろうが、これまで全くと言っていいほど関わりがなかったため、王子についてはほとんど何も知らない。



手足も外そうと試みるが頑丈らしい。


「……大人しく受け入れるしかないのか…、やっと、ここまでたどり着いたのに…!」




すぅっと涙がこぼれ落ちた。

自分が情けない。
この国に来て騎士になって、この生活に満足していたのかもしれない。

昔の無力な自分じゃなくなった。
自分は戦える。



そんな根拠のない自信が、全く通じないことに今さら気づいた。



自分は騎士の中でも下の下
自分1人でこの状況を変える自信がない。




「ごめんなさい…。」



次々に溢れる涙を拭うことも出来ずに、あの日のように泣き続けた。




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