陰の王子様
「…泣き止んだ?」
不意に声が聞こえて体を動かそうとするが、手足が縛られているために、動かせない。
ベッドを囲む布を手で開けて、そこにはサンチェさんがいた。
困ったような表情を浮かべ、中に入ってくる。
「とりあえず手だけとるね。」
そう言うと頭の上で固定されている手を解いてくれた。
すぐさま体を起こし、サンチェさんから距離を取る。
「そんな警戒しないで。ほら、食事持って来たんだ。食べれる?」
何も反応しない自分にサンチェさんは苦笑し、食事は近くのテーブルに置いた。
「…サンチェさんを自分は信用しても大丈夫なんですか。」
「そうだよねー。そうなるよ。」
んーと考える仕草をするサンチェさんにますます敵視してしまう。