陰の王子様




「……俺の真の主は、ずっと一途に姫を陰から守り続ける奴だよ。」


今はそれだけしか言えない。

そう言って、ベッドから離れて行った。




薄い布越しにサンチェさんが部屋の中を移動している。

それをどういう気持ちで見ているのか、自分でもわからない。



『姫を陰から守り続ける奴』


どういう意味だ。
王子が誰か令嬢でも守っているのか。

そんな人には全く見えないが…。





はっきりしてくれないサンチェさんは部屋の窓を開けているようだった。


ふわっと風が部屋の中に入り、少しだけ空気が変わった気がした。




「シンア、君は君の信念を持ち続けるんだ。たとえ結果がどうであれ、後悔なんかしたくないだろ?」



後悔…
ふと、あの日のことが思い出された。


自分があの場にいれば。
自分に力があれば。





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