陰の王子様
えっ?と思った時には、顔の側に何かいた。
すぐさま距離を取り、右横に目を凝らすが、何も見えない。
すると今度は縛られた腕を、つんっとされた。
驚く自分に何も反応せず、ただひたすらつんつんしている。
「くちばし…?まさか、鳥?いや、なんか大きい気が…。」
全く攻撃される気配がないため、意を決して顔を近づけてみる。
「……やっぱり鳥か…?」
顔を近づけ触っていた自分に気を許したのか、つつくのをやめ、胸元に収まってきた。
「ずいぶん人懐っこいな…。」
はっきりとした正体はわからないが、行動の1つ1つに心を奪われてしまった。
撫でてやれないもどかしさを感じつつ、せめてもと隙間がないくらいに引っ付いて温かさを感じながら、いつの間にか眠りについていた。