1日限定両想い
消えない温もり。
【Wataru Side】
『よく眠ってる。』
そう言ってカーテンを閉めた里谷先生が、ようやくカバンを机に置いた。
慌てて保健室に飛び込んで来て真っ先に須崎の様子を見に行ったことに、里谷先生の焦りが伝わってきた。
『何があったの?』
里谷先生は俺と新田を交互に見たけれど、俺は新田だけを見て、新田は下だけを見ていた。
須崎は登校するには早すぎる時間に職員室へ来て、忘れていたという課題を渡すとすぐに出て行った。
その背中を追った新田がなかなか戻ってこないことに心が騒ぎ、様子を見に行くと新田の腕の中で須崎が泣き崩れていた。
昨日はすぐ近くで座り込んでいた2人が、今日はひとつの影になっていたことに時が止まったのは一瞬で。
新田の声からただならぬ様子を感じてすぐに里谷先生へ電話をかけた。
その後で保健室へ行くと須崎はもう眠っていて、そのときから新田は一言も発していない。
何があった?
本当はすぐにでも聞きたいのに、何かに打ちのめされたような新田の姿がその一言を封じさせた。