1日限定両想い

「なぁ、おじいちゃんって言うたんか?」

『はい。』


不意に何かが引っかかった。

おじいちゃん…?



「須崎が介護してんのはおばあさんやろ?」

『そうですけど…菊池先生、知らなかったんですか?』

「何を。」

『須崎さんのお宅、おじいさんが入院されてるのよ。』


初めて聞く話だった。

そのことに驚いた様子の2人と、急に距離を感じた。


俺は須崎の家庭事情を竹石先生でも里谷先生でも新田でもなく、須崎本人から聞いた。

須崎から聞いたことしか知らなかったけれど、それで充分だと思っていた。

それが、全てだと思っていたから。



『おじさんとおばさんというのはお父さんの兄妹のことよね。何もしてくれないってことはお母さんがお1人で…。』

『1度ゆっくり話したいとは伝えたんですけど、今は時間を取れないと言われました。』


2人の会話に俺は何ひとつついていくことができない。

どうしてだろう。

どうして、俺が1番須崎を近くで見ているなんて思えたのだろう。



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