1日限定両想い

話が見えずに戸惑う俺に、里谷先生が話してくれた。


元々祖母を介護していた祖父が倒れ、身体には麻痺が残った。

現在はリハビリ病院に入院しているが、まだ1人で食事や着替えができないことから母親が付きっきりで面倒をみている。

だから須崎が祖母の面倒をみるしかない。


あの日。

夜の街で祖母を探していた須崎に偶然出会った日。

地面に向かってごめんなさいを繰り返し、私がちゃんと…と呟いていた。


1人で探し回ったりせず、なぜすぐに母親へ連絡しないのかと疑問だった。

仕事中だからかと思っていたが、祖父のことで大変なのにこれ以上手を煩わせたくないと思ったのかもしれない。


鋭いもので胸をえぐられているような息苦しさを覚える。

大丈夫なわけがない。


このままでは、須崎が壊れてしまう。



『今日はもう迎えに来てもらった方が良さそうね。』


里谷先生の声にふっと思考が戻る。


カーテンの向こうで、須崎がまた話を聞いていたらどうしようと思った。



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