1日限定両想い

『須崎はまた大丈夫と言うでしょうから、先に連絡しておきますか。』

『そうね。』


2人がそんな会話をしていても起きてこないということは、須崎はまだ眠っているのだろう。

新田の言う通り、須崎はきっと大丈夫と言うはずだ。

須崎は自分が弱っていることを母親に知られたくないようだったが、いつまでも隠しておけることではない。



『菊池先生?』


須崎の親に連絡するため保健室を出て行こうとした2人が、その場を動かない俺を不思議そうに振り返る。



「残って様子見てます。」

『そう。じゃあお願いね。』


新田が何か言いたげに視線を向けたが、気付かない振りをしてかわす。

ドアが閉まり静かになった保健室の外で、微かな声が聞こえる。

そろそろ生徒が登校し始めているのだろう。



「須崎。」


カーテンの傍まで行って、そっと声をかける。

起こすつもりはない。

でももし起きていれば、話がしたかった。



『菊池先生?』


カーテンの向こうから、小さな声が返ってきた。



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