1日限定両想い

「ありがとうございます。そんな風に言ってもらえて嬉しいです。」


先輩の言葉に、自分自身への問いかけに、はっきりと答えが出たことに驚いていた。

いや、本当はずっと気付いていたんだと思う。



「でも、ごめんなさい。先輩と付き合うことはできません。」

『…そっか。』


先輩のことは好きだけど、恋愛対象ではなかった。

付き合いたいとか、傍にいたいとか、そういう風に思う存在はほかにいて。



『誰か好きな人、いんの?』

「いえ…いません。」


でもそれは、堂々と気持ちを表していい人ではなかった。



「ただ今は、恋愛とかそういう余裕がなくて。」

『そっか。そうだよな。ごめん大変なときに。』

「いえ…私こそごめんなさい。」


嘘をついて、気持ちを隠して。


もし私がこの気持ちを隠さずに伝えたらどうなるのだろう。

その答えに明るい未来はない気がして、"立場"という厚くて高い壁の前に座り込んでいるような感覚だった。



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