1日限定両想い
翌日は土曜日で、菊池先生は部活の練習が終わるお昼頃に迎えに来てくれることになった。
友達が気晴らしに誘ってくれたと言って家を出ると、近くのコンビニまで歩く。
土曜日の昼間、先生に家の前まで迎えに来てもらうことはできない。
「こんにちは。」
『おう。』
もう見慣れた車。
助手席に乗り込むと、菊池先生はすぐに発進させる。
車内では何も話さなかった。
ただ流れ行く景色が見慣れないものに変わっていくのを見つめ続ける。
1時間と少し走った後、車は静かな海辺に停まった。
立てられている看板の地名は知らないもので、遠く県外へ来たことだけを知る。
「海だ。」
『もうちょっと行ったとこにサーフィンのスポットがあるから、ここで遊ぶやつはおらん。穴場やな。』
「先生、サーフィンするんですか?」
『学生のときにちょっとな。』
砂浜まで歩きながら、何気ない話をした。
少し先を歩く菊池先生の手を掴みたくて、そんなことを考えていたら足が止まっていた。