1日限定両想い
『須崎?』
気付いて振り返った菊池先生が、手を差しのべてくれる。
そっとその手に触れた瞬間、溜め込んでいた想いが涙と共に一気に溢れた。
『大変やったな。』
引き寄せて抱きしめてくれた菊池先生の体温に、溢れ出た想いを止められなくなる。
でもそれで良かった。
菊池先生になら、どんな姿を見られてもいい。
どんな私でも受けとめてくれると思えるから。
『ばあちゃんは大丈夫か。』
「はい。今日は父も母もいるので。」
『なぁ、須崎。』
砂浜に並んで座った後も手は繋がれたままで。
落ち着いて話せるようになった私を呼んだ菊池先生が、手の力をぎゅっと強くする。
『初めて話したときから思ってたけど、お前はなんでそんな大人なんや。』
「え?」
『高校生と話してる感じがない。落ち着いてて大人みたいなんがずっと不思議やった。』
普通だと思っていたことを不思議だと言われることが不思議だった。
なんでそんなに大人なのだと聞かれても、自分では分からない。