1日限定両想い

『でもな、接する機会が多くなるにつれて須崎のいろんな一面を見てきた。』

「はい。」

『お前はまだまだ子供や。頼りないし放っとけへん。』


まっすぐに目を見る菊池先生から目が離せなかった。

その一言一言が、心の奥底で凝り固まっていた気持ちをほぐしていく。



『もっと文句言うたらええ。ワガママ言うたらええ。泣きたいときは、思い切り泣いたらええ。』

「菊池先生…」


重い重い心の蓋が外れて、何かが壊れたみたいに涙が溢れる。

こんな言葉を、ずっと誰かに言ってほしかった。

飛び込んだ菊池先生の胸の中で、頭が空っぽになっていくのを感じる。



「先生…おじいちゃん死んじゃった…。お父さん、間に合わなくて。叔父さんと叔母さんがこんなときにも仕事なのかって言って…」

『うん。』

「お父さんが仕事ばかりなのは、おじいちゃんの入院費とかおばあちゃんの介護にかかるお金を稼いでくれるためなんだよ?お父さん…いつも必死で仕事してた。』


弱っていく両親の傍にいたかったと思う。

私も弟もまだ学生で、お金は沢山かかるのに自分では稼げないことがもどかしかった。



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