1日限定両想い

「おじいちゃんが倒れて入院してからも、おばあちゃんの認知症がひどくなってからも、叔父さんと叔母さんは何もしてくれなかった。」

『うん。』

「おむつやパジャマのひとつも買って来てくれない。なのに最後は…最後だけ…自分たちが1番悲しいみたいに大泣きしてたの。」


あのとき感じた何とも言えない想いを吐き出したら止まらなくなった。

菊池先生の広い胸の中と懐に飛び込んでしまえば怖いことなんて何もなくて、ここにいるだけで心が救われていく。



「悲しかった。お父さんもお母さんも私も弟も。おばあちゃんだってきっと…おじいちゃんがいなくなっちゃって本当に寂しい。」

『そうやな。』

「でもそんな叔父さんと叔母さんの姿を見てたら泣けなかった。ずっと…泣けなかった…。」


閉じ込められていた悲しみや喪失感が一気に押し寄せて、そこからは言葉にならなかった。

きつくぎゅっと、だけど苦しくはない力で抱きしめてくれる菊池先生が、全てを受け入れてくれているような気がした。



< 140 / 250 >

この作品をシェア

pagetop