1日限定両想い
『言うなって言うてるやろ。』
「でも…」
伝えるだけならいいと思っていた。
菊池先生がどれだけ私の心を救ってくれたか知ってほしかっただけなのに。
『俺が…これ以上抑えられへんねん。』
「…え?」
『頼む、分かってくれ。』
「何をですか?」
『俺が教師やということ。』
そんなこと分かってる。
そう答えようとしたけれど言葉にならなかった。
伝えてしまったら明るい未来はないと思っていた自分を忘れていた。
私たちのことを誰も知らない場所で、つい気持ちが溢れてしまって。
菊池先生は教師で、私の気持ちに応えられるわけがなかった。
でも抑えられないってことは、菊池先生だって…
「今日だけでいいから…。」
『は?』
「先生が抑えられないって思った気持ち、今日だけ全部ください。」
近くで見る菊池先生の表情は、いつも通りの無表情だ。
だけど少しずつその表情が苦しそうに歪んで、見えなくなった。
私の唇に、菊池先生の唇が重なっていたから。