1日限定両想い
それは一瞬の出来事だった。
はっとしたように離れた菊池先生の顔を追いかけて、ほとんど倒れ込むようにもう1度重ねる。
菊池先生はそれを静かに受け止めて、受け入れてくれた。
最後だと思った。
これは、最初で最後のキスだ。
息ができないくらいの深いキスが、私の心を連れ去っていく。
今日だけの両想い。
明日になればもう、菊池先生は私の気持ちに応えてはくれない。
「先生…」
『須崎。お前はもう俺を頼らんでも大丈夫や。』
身体を離すと、菊池先生は静かに告げた。
今日が、終わる。
両想いが終わる。
私が伝えてしまったばっかりに。
『これからもずっと見守っとる。もうあの部室にも来るな。』
「先生…ごめんね…。」
最後まで迷惑ばかりかけてしまった。
感情的にならずに大事に育てていけば、卒業してから伝えることだってできたのに。
全部私のせいだ。
全部、私のせいだった。