1日限定両想い

「須崎?」


放課後、廊下にぽつんと佇む須崎を見つけた。

視線の先にはあの元部室がある。



「菊池先生、来てないぞ。」

『知ってます。』

「だよな。」


普段通りの何気なさを装ったつもりで、普段通りが何だったのか思い出せない。

菊池先生という名前に、須崎の表情が少し強張る。



「体調はどうだ。大丈夫か?」

『はい。』

「おばあさんは?」

『ショートステイに行けるようになって、施設ももうすぐ見つかるかもしれません。』

「そうか。良かったな。」


須崎が介護している祖母。

祖父が亡くなり、母親が家にいる時間が長くなったことで須崎の負担は少し減っているようだった。

提出物を忘れたり、体調を崩して保健室で休むこともなくなっている。


なのに、ずっと表情が晴れない。


理由が分かりきっているから、よりどうしていいのか分からなくなる。

須崎の弱っている姿を見てから、距離の取り方が更に難しくなった。



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