1日限定両想い

「じゃあな、気をつけて帰れよ。」

『あの、』


沈黙が長くなる前に立ち去ろうとすると、珍しく須崎が俺を呼び止めた。



「どうした?」

『誰が見たんですか?菊池先生と私のこと。誰が校長先生に言ったんですか?』

「それは、俺も聞いてないんだ。」


須崎がこんなにも直球で聞いてきたことに驚いていた。

その焦りに、あの日偶然出会ったというのはやっぱり嘘なんじゃないかと思う。


2人はきっと、お互いに会いたいという意思を持って会っていた。



『そうですか。』

「須崎が気にすることじゃないよ。」

『でも…』

「菊池先生ならすぐ戻ってくるから大丈夫だ。」


小さく頷いて、須崎は帰っていった。

その小さな背中からは、何も納得していないと伝わってくるようだ。


気にするなと言ったけれど、本当は俺も気になっていることだった。

2人を見て、それを直接校長に言った生徒のことが。


クラスメートや担任などの近しい存在ではなくいきなり校長先生に言ったことが、確実に菊池先生にダメージを与えようとしているように思えた。



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