1日限定両想い

「どうして私に謝るんですか?」

『それは、須崎さんも校長先生からいろいろ聞かれただろうし…申し訳ないことしたなって思って。』


見られたのは一緒に車に乗っているところだけで、私の気持ちにまでは気付かれていないだろう。

そのことに少しほっとして、でももう私の気持ちの行き場もなくなっていて。



「私は大丈夫です。菊池先生とも偶然会っただけで何もなかったですし。」

『それなら良かったんだけど…。』

「先輩は何も気にしないでください。」

『ごめん、ありがとう。』


菊池先生が辞めたのは先輩が悪いわけじゃない。

もし一緒にいるところを見られたのが他の生徒だったとしても校長先生には言われたはずだし、もっと変な噂を広げられたりもしただろう。


誰にも見られていなかったとしても、菊池先生はきっと学校を辞めていた。

私が気持ちを告げた時点で、もう終わりは始まっていたんだ。


新田先生は違うと言ってくれたけれど、菊池先生が辞めてしまったのは、紛れもなく私のせいだ。




< 159 / 250 >

この作品をシェア

pagetop