1日限定両想い

大変なことも沢山あったけれど、私は祖母が大好きだった。

悲しみに暮れる中で祖父のときを思い出して、菊池先生のことも思い出してしまった。


頼れる人は、もういなかった。



『竹石先生も心配してたぞ。』

「はい…。」

『ちょっと話すか。』


私のトーンが下がったことに気付いてくれたのか、新田先生は数字準備室へ入れてくれた。

いつかと同じ、放課後の薄暗い部屋。



『進路、変える気はないのか?』

「ありません。」


竹石先生が心配してくれているのは祖母のことだけじゃなかった。

私の希望進路を竹石先生は何度も確認してきて、その度に着地点のない平行線のやりとりを繰り返してきた。



『大阪じゃないと駄目なのか?』

「はい。大阪じゃないと意味がありません。」

『大阪で何がしたい。将来何になりたい。』


大阪へ行きたかった。

進学でも就職でも、大阪へ行けるのなら何でも良かった。


新田先生ならその理由を分かってくれているはずなのに、何も知らないみたいに聞く。



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