1日限定両想い
須崎から第一志望の短大に合格したと聞いたのは、知人に当たり尽くしてしまった直後だった。
「本当におめでとう。良かったな。」
『ありがとうございます。』
わざわざ報告に来てくれた準備室で、須崎は晴れやかな表情をしていた。
菊池先生がいなくなってからしばらくは落ち込んでいるように見えたけれど、少しずつ気持ちを回復させてきたのだろう。
菊池先生と須崎のことを校長に話したのが仲の良かった桜木だったこともショックだったはずだ。
それでも須崎は自分と向き合うことを避けずに、ひとつずつ階段を上ってきた。
「家から通うのか?」
『はい。そのつもりです。』
一時は大阪へ行くと言って聞かなかったけれど、菊池先生と連絡が取れなくなってからは一言も聞かなくなった。
卒業すれば会えるという微かな望みが打ち砕かれた瞬間だった。
「見せてあげたかったな…。」
『え?』
「須崎が卒業するとこ。」
今でも思う。
その瞬間を、俺が作ってしまって良かったのかと。