1日限定両想い
『おじいちゃんもおばあちゃんも、きっと見ててくれると思います。』
「そうだな。」
須崎が純粋にそう捉えたのか、わざと菊池先生の名前を避けたのかは分からない。
その名前を出してもいいのか、更に分からなくなる。
卒業して、須崎が自分で連絡を取ったときに気付く方が良かったんじゃないかと今でも考える。
あのときは大阪へ行くなんて無謀だと決めつけていたけれど、今となっては思うようにさせてあげれば良かったとも思う。
「なぁ、須崎。」
『はい。』
「卒業式が終わったら2人で話せるか?何時になってもいい。ここで待ってる。」
『分かりました。』
須崎は少し不思議そうな顔をしたけれど、拒否することはなかった。
須崎が卒業するということは、会えなくなるということだ。
それは、須崎と菊池先生を繋ぐものが本当になくなってしまうということでもある。
そうなったときに、俺はどうするべきなのだろう。
菊池先生が人生をかけて封じ込めたものと同じ想いを、俺がこぼすことは許されるだろうか。