1日限定両想い

「須崎、もしかして今も…」

『はい。まだ飲んでるんです。』


介護に悩み苦しんでいた頃に須崎が持っていたものだから、介護が終わった今はもう必要なくなったのだと決めつけていた。


でも須崎は、まだ苦しみの中にいた。



『介護してた頃は飲んでなかったんです。処方されたから一応持ってたけど、薬に頼りたくないって気持ちもあって。』

「そうだったのか。」

『でも、菊池先生が辞めちゃってから…』


不意に言葉に詰まり、代わりに涙が溢れてくる。

気持ちを表に出さないようにと繋いできた緊張が、途切れてしまったのかもしれない。



『私が菊池先生の人生を壊したんだって思って、いろいろ考えてたら眠れなくなって…それで…。』

「須崎。」


一歩分の距離を詰めて、そっと抱き寄せる。


どうして気付いてやれなかったのだろう。

自分が思い詰めるばかりで須崎に気を遣わせて、須崎をさらに追いつめていた。

あれから須崎がひとりで過ごしてきた時間を思うと、胸が裂けるように痛む。



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